
ナイキスト安定性基準(またはナイキスト基準)は、制御工学において動的システムの安定性を決定するために使用されるグラフィカルな手法です。ナイキスト安定性基準は開ループ制御システムのナイキストプロットのみを考えるため、閉ループまたは開ループシステムの極や零点を明示的に計算することなく適用できます。
その結果、ナイキスト基準は非有理関数(遅延を持つシステムなど)で定義されたシステムにも適用できます。ボード図とは異なり、右半平面に特異点を持つ伝達関数に対応できます。
ナイキスト安定性基準は以下の式で表されます:
Z = N + P
ここで:
Z = 1+G(s)H(s)のs平面の右側にある根の数(特性方程式の零点とも呼ばれる)
N = 臨界点1+j0を時計回りに囲む回数
P = 開ループ伝達関数(OLTF)[すなわちG(s)H(s)]のs平面の右側にある極の数。
上記の条件(すなわちZ=N+P)は、安定しているシステムでも不安定なシステムでも有効です。
次に、ナイキスト安定性基準の例を説明します。
開ループ伝達関数(OLTF)を以下のように考えます:
このシステムは安定しているか不安定ですか?おそらく多くの人は、一つの極が+2にあるため不安定と答えるでしょう。ただし、安定性は閉ループ伝達関数の分母に依存することに注意してください。
閉ループ伝達関数(特性方程式とも呼ばれる)の分母の任意の根がs平面の右側にある場合、システムは不安定です。したがって、上記の場合、+2の極はシステムを不安定にしようとするかもしれませんが、システムは安定しているかもしれません。ここではナイキストプロットが有用です。
ナイキスト理論によれば、Z=N+P(任意のシステムに対して、安定しているかどうかに関わらず)。
安定したシステムの場合、Z=0、つまり特性方程式の根はs平面の右側に存在しない。
したがって、安定したシステムの場合、N = –P。
上記システムのナイキストプロットは以下の通りです。
s = tf('s')
G1 = 120 / ((s-2)*(s+6)*(s+8))
nyquist(G1, 'red')
図から、ナイキストプロットは点 –1+j0(臨界点とも呼ばれる)を反時計回りに一度囲みます。従ってN= –1、OLTFにはRHSに一極(+2)があるためP =1となります。N= –Pであることがわかりますので、システムは安定しています。
特性方程式の根を求めると、それは –10.3, –0.86±j1.24となります。(すなわちシステムは安定)、そしてZ=0となります。質問として、特性方程式の根を求めることができ、その根に基づいて安定性を評価できるなら、なぜナイキストプロットが必要なのかという疑問が生じることがあります。答えは、ソフトウェアが利用可能でなかった時代、ナイキストプロットは非常に有用だったということです。
次の例を考えてみましょう:![]()
ナイキストプロットは以下の通りです: