同期モーターにおける電力角と負荷
同期モーターの電力角(Power Angle)と負荷には密接な関係があります。これらの概念を理解することで、同期モーターの動作原理と性能をよりよく把握することができます。以下に詳細な説明を行います。
1. 電力角(Power Angle)
定義
電力角(トルク角または電気角とも呼ばれ、δで表記される)は、ロータ磁界軸とスタータ磁界軸との位相差を指します。これは、ロータ磁界がスタータ磁界に対してどのような位置にあるかを示しています。
影響
電力伝送:電力角は、同期モーターが電力網から吸収する有効電力に直接影響を与えます。電力角が大きいほど、モーターが吸収する有効電力も大きくなります。
安定性:電力角が過大になると、モーターは同期を失い、「滑り」現象を引き起こす可能性があります。
2. 負荷
定義
負荷とは、同期モーターによって駆動される機械的負荷であり、通常、キロワットまたは馬力などの単位で表現されます。
関係
電力角と負荷の関係:同期モーターの電力角δと負荷Pには非線形の関係があり、以下の式で表すことができます。

ただし:
Pはモーターが吸収する有効電力(ワットまたはキロワット)です。
Eはモーターの無負荷起電力(ボルト)です。
Vは電力網の電圧(ボルト)です。
Xsはモーターの同期リアクタンス(オーム)です。
δは電力角(ラジアン)です。
3. 電力角特性のグラフ表示
特性曲線
特性曲線:電力角と負荷の関係は特性曲線で表すことができます。この曲線は通常非線形で、正弦関数に従います。
最大電力点:電力角δが90度(π/2ラジアン)に達すると、モーターは最大の有効電力Pmaxを吸収します。

滑り点:電力角が90度を超えると、モーターは同期を失う可能性があり、「滑り」状態になります。
4. 影響要因
電力網電圧
電圧変動:電力網電圧Vの変動は、電力角と負荷の関係に影響を与えます。電圧が上がると、モーターはより多くの有効電力を吸収できます。
モーターのパラメータ
同期リアクタンス:同期リアクタンスXsはモーターの重要な内部パラメータであり、電力角と負荷の関係に影響を与えます。同期リアクタンスが高いほど、モーターが吸収する有効電力は少なくなります。
負荷変動
負荷増加:負荷が増加すると、モーターは自動的に電力角を調整してより多くの有効電力を吸収し、新たな平衡点に達します。
5. まとめ
電力角δ:ロータ磁界とスタータ磁界との位相差を表し、モーターが吸収する有効電力に直接影響を与えます。
負荷P:モーターによって駆動される機械的負荷で、電力角との間に非線形の関係があります。
関係式:P=(EV/Xs)sin(δ)は、電力角と負荷の関係を表します。
最大電力点:電力角δが90度に達すると、モーターは最大の有効電力Pmax=EV/ Xsを吸収します。
滑り点:電力角が90度を超えると、モーターは同期を失う可能性があります。
これらの概念を理解することで、同期モーターの設計と運転をより良く行い、さまざまな条件下での安定した動作を確保することができます。