同期モーターの励磁を減らすことによる電流消費量への影響
同期モーターの励磁を減らすと、その電流消費量に大きな影響を与え、主に以下の重要な側面に影響します:
1. アーマチャトコリの変化
同期モーターのアーマチャトコリ(つまりスターターカレント)は、有効カレントと無効カレントの2つの成分で構成されています。これらが合計して全体のアーマチャトコリを決定します。
有効カレント:モーターの機械出力に関連し、通常は負荷によって決定されます。
無効カレント:磁界を形成するために使用され、励磁カレントと密接に関連しています。
励磁カレントが減少すると、モーターの磁界の強さが弱まり、以下のような変化が生じます:
無効カレントの増加:同じパワーファクターを維持するためには、モーターは弱くなった磁界を補うためにより多くの無効カレントを電力網から引き出す必要があります。これにより、全体のアーマチャトコリが増加します。
カレントの不均衡:励磁が非常に低い場合、モーターは低励磁状態になり、有効電力を引き出すだけでなく、大量の無効電力を電力網から引き出す必要が生じます。これは、カレントの不均衡、電圧の揺れ、または不安定性につながる可能性があります。
2. パワーファクターの変化
同期モーターのパワーファクターは、その効率を示す重要な指標です。パワーファクターは以下の2つの状態に分類できます:
リードパワーファクター(過励磁状態):励磁カレントが高い場合、モーターは余剰磁束を生成し、電力網に対して無効電力を供給し、リードパワーファクターとなります。
ラグパワーファクター(低励磁状態):励磁カレントが減少すると、モーターは十分な磁束を生成できず、電力網から無効電力を引き出す必要があり、ラグパワーファクターとなります。
したがって、励磁カレントを減らすと、モーターのパワーファクターが悪化(よりラグ方向に)し、無効カレントの需要が増加し、全体のカレント消費量も増加します。
3. 電磁トルクの変化
同期モーターの電磁トルクは、励磁カレントとアーマチャトコリの両方に関連しています。具体的には、電磁トルク T は以下の式で表されます:
T は電磁トルク、k は定数、ϕ はエアギャップの磁束(励磁カレントに比例)、Ia はアーマチャトコリです。

励磁カレントが減少すると、エアギャップの磁束 ϕ が減少し、電磁トルクも減少します。同じ負荷トルクを維持するためには、モーターはこの損失を補うためにアーマチャトコリを増加させる必要があります。そのため、励磁カレントを減らすと、アーマチャトコリが増加し、全体のカレント消費量も増加します。
4. 安定性の問題
励磁カレントが非常に低くなると、モーターは低励磁状態になり、同期を失う可能性があります。この状態では、モーターは電力網との同期を維持できず、深刻な電気的および機械的な故障を引き起こす可能性があります。さらに、低励磁状態では、モーターの安定性とダイナミックな応答が悪化します。
5. 電圧調整への影響
同期モーターは、励磁カレントを調整することで電力網の電圧を制御することができます。励磁カレントが減少すると、モーターの電力網電圧をサポートする能力も低下し、特に重負荷条件下では電力網電圧の低下を引き起こす可能性があります。
まとめ
同期モーターの励磁カレントを減らすと、そのカレント消費量に以下の主要な影響があります:
アーマチャトコリの増加:弱くなった磁界を補うために、電力網からより多くの無効カレントを引き出す必要があるため、全体のアーマチャトコリが増加します。
パワーファクターの悪化:励磁カレントを減らすと、パワーファクターが悪化(よりラグ方向に)し、無効カレントの需要が増加します。
電磁トルクの減少:同じ負荷トルクを維持するためには、モーターはアーマチャトコリを増加させ、結果としてカレント消費量が増加します。
安定性と電圧調整能力の低下:励磁が不足すると、同期の喪失や電圧の不安定性が生じる可能性があります。
したがって、実際のアプリケーションでは、負荷要件に基づいて適切に励磁カレントを調整し、効率的かつ安定したモーター運転を確保することが重要です。