巻線ロータ誘導電動機とスQUIRREL CAGE誘導電動機の違い
巻線ロータ誘導電動機(WRIM)とスQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM)は、構造、性能、用途が異なる2つの一般的な誘導電動機です。以下に両者の主な違いを示します。
1. ロータ構造
巻線ロータ誘導電動機(WRIM):
ロータは3相巻線で構成され、スリップリングとブラシを介して外部回路に接続されています。これにより、ロータ巻線を外部抵抗や他の制御装置に接続することができます。
ロータ巻線を外部から制御できるため、特に起動時や速度制御時に柔軟な制御が可能です。
スQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM):
ロータは鋳造アルミニウムまたは銅棒で構成され、かご状の構造になっています。これが「スQUIRREL CAGE電動機」と呼ばれる理由です。
この設計は単純で堅牢であり、スリップリングやブラシがないためメンテナンスコストが低いです。ただし、ロータ電流を直接外部から制御することはできません。
2. 起動特性
巻線ロータ誘導電動機(WRIM):
起動時には、ロータ巻線に直列に抵抗器を挿入することで起動電流を減らし、起動トルクを増加させることができます。電動機が加速するにつれて、抵抗器は徐々に減少し、最終的にはショートサーキットされます。
この方法により、より滑らかな起動プロセスが可能になり、クレーン、コンベヤー、大型ポンプなど高起動トルクが必要な用途に適しています。
スQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM):
起動時にはロータ電流が高く、定格電流の6〜8倍の大きな起動電流になります。起動トルクは比較的低く、通常は定格トルクの1.5〜2倍程度です。
起動電流を減らすためにスターデルタスターターやソフトスターターがよく使用されますが、巻線ロータ電動機ほどの起動性能はありません。
3. 速度制御
巻線ロータ誘導電動機(WRIM):
ロータ巻線は外部回路を通じて制御でき、広い範囲での速度制御が可能です。一般的な速度制御方法には、ロータ抵抗制御とカスケード制御があります。
この方法は変頻駆動(VFD)制御ほど精度は高くありませんが、大幅な速度変化が必要な用途に効果的です。
スQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM):
従来のスQUIRREL CAGE電動機には組み込みの速度制御機能がなく、その速度は主に供給周波数によって決まります。速度制御を行うには、通常、VFDを使用して供給周波数を変更する必要があります。
VFD制御により精密な無段階の速度調整が可能ですが、システムの複雑さとコストが増します。
4. 効率とメンテナンス
巻線ロータ誘導電動機(WRIM):
スリップリングとブラシがあるため、定期的な点検とブラシの交換などの高いメンテナンスが必要です。スリップリングとブラシからの摩擦によりエネルギー損失が生じ、電動機の効率に影響します。
しかし、頻繁な起動、ブレーキング、または速度制御が必要な用途では、巻線ロータ電動機の性能上の利点がメンテナンスコストを上回ることがあります。
スQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM):
スリップリングやブラシがないため、設計は単純でメンテナンスが最小限に抑えられ、長期にわたる信頼性のある動作が可能です。
特に全負荷条件下では効率が高く、追加の機械的摩擦損失がないためです。
5. 応用分野
巻線ロータ誘導電動機(WRIM):
高起動トルク、頻繁な起動/停止、および速度制御が必要な用途に適しています。例えば:
クレーン
コンベヤー
ファン
ポンプ
冶金業界の転轍機
スQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM):
速度制御や高起動トルクが不要な標準的な産業用途で広く使用されています。例えば:
エアコンシステム
換気設備
水ポンプ
コンベヤーベルト
農業機械
6. コスト
巻線ロータ誘導電動機(WRIM):
より複雑な構造のため、製造コストが高く、特にスリップリング、ブラシ、制御システムなどの追加部品が必要です。
高性能な用途に適しており、初期投資は高くても、パフォーマンス上の利点により時間とともに生産性が向上します。
スQUIRREL CAGE誘導電動機(SCIM):
シンプルな設計により製造コストが低く、さまざまな汎用産業設備で広く使用されています。
複雑な制御や速度制御機能が不要なコスト重視の用途に最適です。
まとめ
巻線ロータ誘導電動機とスQUIRREL CAGE誘導電動機はそれぞれ長所と短所を持っています。どちらを選択するかは具体的な用途要件によるものです。巻線ロータ電動機は優れた起動性能と速度制御を提供し、高起動トルクと頻繁な速度変更が必要な用途に適しています。一方、スQUIRREL CAGE電動機は単純さ、低メンテナンス、コスト効果が高く、標準的な産業設備で広く使用されています。