不平衡相故障の定義
誘導電動機において、「相不平衡故障」は通常、三相の電流(または電圧)の振幅が不一致であり、その振幅の差が規定範囲を超える状況を指します。理想的には、三相の電圧ベクトルの大きさは等しく、A、B、Cの順で配置され、各ペア間には2π/3の角度があります。しかし、実際の動作に影響を与える様々な要因により、この平衡状態が破れ、相不平衡が生じることがあります。
不平衡相故障の原因
三相電圧の不平衡:三相電圧が不平衡である場合、モーター内に逆電流と逆磁界が発生し、大きな逆トルクを生成します。これにより、モーター内の三相電流の分布が不平衡になり、ある一相の巻線電流が増加します。
過負荷:特に起動時など、過負荷条件下で動作すると、モーターのスタータとロータの電流が増加し、熱が発生します。これが少し長期間続くと、巻線電流の不平衡が非常に起こりやすくなります。
モーターのスタータおよびロータ巻線の故障:スタータ巻線にターン間短絡、局所接地、または開路がある場合、一相または二つのロータ巻線に過大な電流が流れ、三相電流の深刻な不平衡を引き起こします。
人員による操作やメンテナンスの不適切さ:作業者が定期的に電気設備を点検・保守しないことで、電気設備に人為的な漏れ電流や相欠損が発生します。
不平衡相故障の危険性
電力の線路損失の増加:三相四線式供給ネットワークでは、線路導体を通る電流により、インピーダンスの存在により電力損失が避けられません。これらの損失は流れる電流の2乗に比例します。三相四線式で低圧グリッドが供給する場合、単相負荷の存在により三相負荷の不平衡は避けられません。三相負荷の不平衡運転時には、中性線にも電流が流れます。これにより、フェーズ導体だけでなく中性線でも損失が発生し、電力網の線路損失が増加します。
配電トランスフォーマーでのエネルギー損失の増加:配電トランスフォーマーは低圧グリッドにおける主要な供給設備です。三相負荷不平衡条件下で動作すると、配電トランスフォーマーの損失が増加します。
配電トランスフォーマー容量の減少:配電トランスフォーマーの設計時に、その巻線構造はバランスの取れた負荷運転条件のために設計され、各巻線の性能は一般に均一で、各相の定格容量も等しくなります。配電トランスフォーマーの最大許容容量は各相の定格容量によって制限されます。もし配電トランスフォーマーが三相負荷不平衡条件下で動作すると、負荷が少ない相には余剰容量が生じ、トランスフォーマーの出力が減少します。この減少の程度は三相負荷の不平衡度に関連しています。三相負荷の不平衡度が大きいほど、配電トランスフォーマーの容量はより減少します。
配電トランスフォーマーによって生成される零相電流:配電トランスフォーマーが三相負荷不平衡条件下で動作すると、零相電流が生成されます。この零相電流は三相負荷の不平衡度に応じて変化します。不平衡度が大きいほど、零相電流も大きくなります。
結論
誘導電動機における「相不平衡故障」は複数の要因が関与する複雑な問題です。その原因と危険性を理解することは、モーターの正常な動作と寿命延長を確保するために重要です。適切なメンテナンスと保護措置を講じることで、相不平衡故障の発生を効果的に減らすことができます。