変圧器が供給する送電線の二次側での故障電流(短絡電流)の計算は、電力システムの複数のパラメータを含む複雑なプロセスです。以下の手順と関連する公式は、この計算方法を理解するのに役立ちます。ここでは、システムが三相交流システムであり、故障が変圧器の二次側で発生すると仮定します。
1. システムパラメータの決定
変圧器のパラメータ:
変圧器の定格容量 S rated (単位: MVA)
変圧器のインピーダンス ZT (通常、パーセントで示されます。例:ZT = 6%)
変圧器の一回側電圧 V1 (単位: kV)
変圧器の二次側電圧 V2 (単位: kV)
送電線のパラメータ:
送電線のインピーダンス ZL (単位: オームまたはオーム/キロメートル)
送電線の長さ L (単位: キロメートル)
等価ソースインピーダンス:
ソースの等価インピーダンス ZS (単位: オーム)、通常は上流の電力網によって提供されます。ソースが非常に強力(例:大規模な発電所や無限大バス)である場合、ZS ≈ 0 と仮定できます。
2. すべてのインピーダンスを同じ基準に正規化する
計算を簡素化するために、通常はすべてのインピーダンスを同じ基準値(通常は変圧器の一回側または二次側)に正規化します。ここでは、すべてのインピーダンスを変圧器の二次側に正規化することを選択します。
基準電圧:二次側電圧 V2 を基準電圧として選択します。
基準容量:変圧器の定格容量 Srated を基準容量として選択します。
基準インピーダンスは次のように計算されます:

ここで、V2 は二次側のライン電圧 (kV) であり、S rated は変圧器の定格容量 (MVA) です。
3. 変圧器のインピーダンスの計算
変圧器のインピーダンス ZT は通常、パーセントで示され、実際のインピーダンス値に変換する必要があります。変換式は次の通りです:

4. 送電線のインピーダンスの計算
送電線のインピーダンスがオーム/キロメートルで与えられている場合、線路長 L に基づいて総インピーダンスを計算します:

5. 等価ソースインピーダンスの計算
等価ソースインピーダンス ZS が既知の場合、直接使用します。ソースが非常に強力な場合は、ZS ≈ 0 と仮定できます。
6. 総インピーダンスの計算
総インピーダンス Ztotal は、変圧器のインピーダンス、送電線のインピーダンス、および等価ソースインピーダンスの合計です:

7. 故障電流の計算
故障電流 Ifault はオームの法則を使用して計算できます:

ここで、V2 は二次側のライン電圧 (kV) であり、Ztotal は総インピーダンス (オーム) です。
注:計算された I fault はライン電流 (kA) です。必要であれば、相電流を得るためには

8. システムの短絡容量の考慮
いくつかの場合には、システムの短絡容量 SC を考慮する必要があります。これは次のように計算できます:

ここで、SC は MVA です。
9. 並列送電線の考慮
複数の並列送電線がある場合、各線路のインピーダンス ZL は並列に結合する必要があります。n 本の並列線路の場合、総送電線インピーダンスは次の通りです:

10. その他の要因の考慮
負荷の影響:実際のシステムでは、負荷が短絡電流に影響を与える可能性がありますが、ほとんどの場合、負荷インピーダンスはソースインピーダンスよりも大きく、無視できます。
リレー保護動作時間:短絡電流の持続時間は、リレー保護装置の動作時間によります。これらの装置は通常、ミリ秒から秒の間で故障をクリアします。
まとめ
変圧器が供給する送電線の二次側での故障電流を計算するには、変圧器のインピーダンス、送電線のインピーダンス、および等価ソースインピーダンスを考慮する必要があります。すべてのインピーダンスを同じ基準値に正規化し、オームの法則を適用することで、故障電流を計算できます。実際の応用では、リレー保護装置の動作時間と負荷の影響も考慮する必要があります。