トランスの空載運転
トランスが空載条件下で動作するとき、二次巻線は開放回路となり、二次側の負荷が無くなり、二次電流はゼロになります。一次巻線には、定格電流の2〜10%程度の小さな空載電流I0が流れます。この電流は、コアでの鉄損(磁気ヒステリシス損失と渦電流損失)と一次巻線での最小限の銅損を供給します。
空載電流I0の遅れ角はトランスの損失によって決定され、力率は非常に低く、0.1から0.15の範囲になります。

空載電流の成分とベクトル図
空載電流の成分
空載電流I0 は以下の2つの成分で構成されています:
リアクティブ(励磁)成分 Im
適用電圧V1に対して直角に位相がずれる
電力消費なしでコア磁束を生成する
アクティブ(パワ)成分 Iw
V1と位相が一致する
鉄損と一次巻線の最小限の銅損を供給する
ベクトル図の作成手順
励磁成分Imは磁束ϕと位相が一致し、励磁磁束を生成します。
誘導起電力E1およびE2は磁束ϕに対して90度遅れます。
一次銅損は無視できるほど小さく、二次電流I2 = 0であるため、二次損失はありません。
空載電流I0は、ベクトル図に示すように、V1に対して角度ϕ0(空載力率角)だけ遅れます。
適用電圧V1は、E1と等しくかつ反対向きに描かれます。その空載時の差は無視できるほど小さいためです。
アクティブ成分IwはV1と位相が一致します。
空載電流I0 はImとIwのベクトル和です。

上記のベクトル図から、以下の結論が得られます:
