磁場弱化とは、モーターの動作中にその性能を変更するために磁場強度を調整するプロセスを指します。DCモーターでは、磁場弱化は通常、励磁電流を減らすことで達成されます。ACモーター、特に誘導モーターと永久磁石同期モーターでは、電源の周波数を変更したり、インバータの出力を制御することで磁場弱化を行うことができます。
磁場弱化が誘導モーターに及ぼす影響
誘導モーターにおいて、磁場弱化技術は主にモーターの速度範囲を拡張するために使用され、特に高速域で有用です。以下に、磁場弱化が誘導モーターに及ぼす主な影響を示します。
1. 速度範囲の拡大
高速運転:高速域では、誘導モーターの逆起電力(Back EMF)が増加し、スタータ電流の有効成分が減少してモーターの出力トルクが制限されます。磁場弱化を適用することで、磁場強度を低減し、Back EMFを減少させ、モーターがより高い速度で動作できるようになり、速度範囲が拡大します。
定出力速度制御:特定の用途では、モーターは広い速度範囲で一定の出力パワーを維持する必要があります。磁場弱化により、モーターは高速域で一定の出力パワーを維持でき、定出力速度制御を実現できます。
2. トルクの減少
トルクの減少:磁場弱化は磁場強度を減少させるため、トルクも減少します。モーターはより高い速度を維持することができますが、それに応じてトルクが減少します。したがって、磁場弱化は高トルクが必要でない高速運転に適しています。
3. 動態性能の改善
動態応答:磁場弱化はモーターの動態応答を改善することができます。高速域では、磁場弱化によりモーターは負荷変化に対してより迅速に反応し、システムの動態性能が向上します。
安定性:磁場弱化の程度を適切に制御することで、モーターの安定性と干渉耐性を改善することができます。
4. 効率と損失
効率:磁場弱化はモーターの効率に影響を与える可能性があります。高速域では、トルクの減少により効率が低下することがあります。しかし、磁場弱化制御戦略を最適化することで、ある程度の高い効率を維持することができます。
損失:磁場弱化はモーターの鉄損と銅損を増加させる可能性があります。磁場強度の変化により、ヒステリシス損失と渦電流損失が増加し、鉄損が増大します。また、電流の変化により抵抗損失が増加し、銅損が増大します。
磁場弱化の達成方法
誘導モーターにおける磁場弱化は、以下の方法で達成できます。
供給周波数の変更:可変周波数駆動装置(VFD)を使用して電源の周波数を変更することで、モーターは異なる速度で動作することができます。高速域では、供給周波数を適切に減少させて磁場弱化を達成することができます。
インバータ出力の制御:インバータの出力電圧と周波数を制御することで、モーターの磁場強度を調整することができます。現代のインバータには、磁場弱化の程度を正確に制御する高度な制御アルゴリズムが搭載されていることが一般的です。
励磁制御:一部の特別に設計された誘導モーターでは、励磁巻線を使用して磁場強度を制御し、磁場弱化を達成することができます。
まとめ
誘導モーターにおける磁場弱化技術は、主に速度範囲を拡張するために使用され、特に高速域で有用です。磁場弱化を適用することで、Back EMFを減少させ、モーターがより高い速度で動作することができますが、これにはトルクの減少という代償が伴います。磁場弱化はモーターの動態性能と安定性を改善することができますが、特定の状況下では効率に影響を与え、損失を増加させる可能性があります。