電圧安定性の定義
電力システムにおける電圧安定性とは、通常運転条件下および障害が発生した後もすべてのバスで許容範囲内の電圧を維持する能力を指します。通常運転時には、システムの電圧は安定していますが、障害や故障が発生すると、電圧不安定が引き起こされ、進行的かつ制御不能な電圧低下につながることがあります。電圧安定性は、時に「負荷安定性」とも呼ばれます。
負荷近傍での障害後の平衡電圧が許容限界以下に落ちると、電圧不安定は電圧崩壊を引き起こす可能性があります。電圧崩壊は、システムの重要な部分で極端に低い電圧プロファイルが生じ、全停電または部分的な停電を引き起こす可能性がある過程です。注目すべき点として、「電圧不安定」と「電圧崩壊」はしばしば互換的に使用されます。
電圧安定性の分類
電圧安定性は主に以下の2つのタイプに分類されます:
大規模障害時の電圧安定性:これは、系統障害、突然の負荷喪失、または発電喪失などの重大な障害後に電圧制御を維持するシステムの能力を指します。この種の安定性の評価には、オンロードタップチェンジングトランスフォーマーや発電機フィールド制御、電流制限器などの装置の動作を考慮に入れるのに十分な時間枠でのシステムの動的性能の分析が必要です。大規模障害時の電圧安定性は、正確なシステムモデリングを使用した非線形時域シミュレーションによって通常研究されます。
小規模障害時の電圧安定性:電力システムの運転状態が、小規模な障害後に負荷近傍の電圧が変化しないか、または障害前の値に近いまま保たれる場合、その状態は小規模障害時の電圧安定性を持つと言えます。この概念は定常状態と密接に関連しており、小信号システムモデルを使用して分析することができます。
電圧安定限界
電圧安定限界とは、電力システムにおいて、無論どれだけの無効電力を注入しても電圧をノミナル値に戻すことができない臨界値を指します。この限界まで、システムの電圧は無効電力の注入により調整しながら安定性を維持することができます。損失のない線路での電力伝送は以下の式で表されます:
ここで P = 相あたりの伝送電力
Vs = 送電側の相電圧
Vr = 受電側の相電圧
X = 相あたりの伝送リアクタンス
δ = Vs と Vr の位相差
線路が損失がないため
発電量を一定と仮定すると
最大電力伝送のために δ = 90º であり、δ→∞ となるとき
上記の式は、受電側電圧が一定であると仮定したときに、δ 対 Vs の曲線上の臨界点の位置を決定します。同様の結果は、送電側電圧を一定とし、Vr を変数パラメータとしてシステムを解析することでも得られます。この場合、結果の式は以下のようになります。
受電側バスでの無効電力表現は以下の通りです。
上記の式は、定常状態の電圧安定限界を表しています。これは、定常状態の安定限界では無効電力が無限大に近づくことを示しています。これにより、dQ/dVr の導関数がゼロになることがわかります。従って、定常状態条件下での回転子角度安定限界は、定常状態の電圧安定限界と一致します。さらに、定常状態の電圧安定性は負荷によっても影響を受けます。