感電の原理
通常の三相四線式電力供給システムでは、中性線(PEN線またはN線)が接地されています。理論的には、中性線の電位は地電位と同じです。三相負荷が平衡している場合、中性線にはほとんど電流が流れません。しかし、人が中性線に触れ、かつ中性線に故障がある場合、感電事故が発生する可能性があります。
感電は主に人体を通過する電流によって発生します。感電による人体への危害の程度は、通過する電流の大きさと持続時間、および電流の経路に関連しています。一般的には、商用周波数の電流(50Hzまたは60Hz)が人体を通過して10mAを超えると、自力で電源から離れることができなくなると考えられています。電流が30mAを超えると、心室細動などの深刻な結果につながる可能性があります。
感電につながる可能性のある中性線の故障状況
中性線の断線
中性線が断線した場合、三相不平衡の状態では、断線点以降の中性線の電位が変化します。例えば、三相四線式の照明回路で、ある場所で中性線が断線すると、各相の負荷(例えばランプ)が完全に同じではないため、元々中性線を通って電源に戻るはずの電流が正常に流れなくなります。このとき、負荷が多い相を例に取ると、その相の一部の電流が他の相の負荷と中性線を通ってループを形成し、中性線の電位がゼロではなくなり、高い電圧になることがあります。このとき、人がこの帯電した中性線に触れると、電流が人体を通過し、感電します。
中性線の接触不良
中性線と設備の接続点や配電盤の中性線端子での接触不良も非常に一般的です。接触不良により、その部分の抵抗値が増加します。オームの法則U=IRによれば、電流が流れると、接触不良の箇所で電圧降下が発生します。この電圧降下が十分に大きくて中性線の電位が地電位からずれると、人が触れると電流が流れ、感電します。
中性線と相線の短絡後に接地故障(より複雑な状況):
このような状況では、中性線に危険な電圧が生じることがあります。例えば、電気機器内部で中性線と相線間に短絡が発生すると、短絡後の大きな電流により保護装置が動作します。しかし、故障が完全に回路を切断しない場合、または接地システムが不完全な場合、一部分の短絡電流が接地装置を通じて大地に流れます。このとき、中性線には一定の残存電圧が生じることがあります。人が中性線に触れると、感電します。
感電による危害の表現
感電傷害
電流が人体を通過すると、神経系や心臓など重要な器官に直接的な感電損傷を与えます。人体はしびれる感覚を感じます。電流が増加すると、この感覚は強くなり、筋肉の痙攣が起こるかもしれません。電流が長時間続くか、または電流が大きい場合、呼吸麻痺や心停止につながります。例えば、人体を通過する電流が数十ミリアンペア以上になると、心室細動という非常に危険な不整脈を引き起こす可能性があり、心臓が効果的に血液を送ることができなくなり、生命を脅かす可能性があります。
電気火傷
人が中性線に触れ感電すると同時に、接触点でアークが発生したり、電流が体内で熱を発生させたりすると、電気火傷が発生します。電気火傷の程度は、電流の大きさ、接触時間、人体の抵抗値などの要因に関連しています。一般的には、高電圧や大電流の感電は深刻な電気火傷を引き起こしやすいです。電気火傷は皮膚だけでなく、皮下組織、筋肉、骨にも深い損傷を与えることがあります。例えば、人が比較的高い電圧の中性線に触れた場合、接触点は焦げて炭化することがあり、熱損傷により周囲の組織は赤み、水疱などの状態になります。