
- プロジェクトの背景と問題の概要
高電力のエアコンプレッサーは10kVの中圧モーターで駆動されており、その起動盤は当初オートトランスフォーマによる降圧起動方式で設計されていました。起動プロセスは以下の2つの段階で構成されています。
- 起動段階: 真空接触器KC1が最初に作動し、オートトランスフォーマの星点をショートさせて、モーターが7kVで起動します。
- 運転段階: 起動プロセスが完了すると、KC1が切断され、真空接触器KC2が作動してオートトランスフォーマをショートさせ、10kVの主回路を接続し、モーターが全電圧で動作します。
主要な問題: 実際の運用において、KC2接触器コイルに電力を供給するワイド電圧電源モジュールが頻繁に故障しています。このモジュールの故障により、接触器コイルへの電力供給が失われ、KC2が異常な切断を起こし、生産設備の予期せぬ停止を引き起こし、生産の安定性と効率に深刻な影響を与えています。
元のワイド電圧電源モジュールは強化整流装置であり、以下の主要な特徴と要件があります。
- 動的な出力電圧切り替え: 交流入力時に即座に300V DCの高電圧を出力して接触器の作動を駆動し、その後約15ms以内に12V DCの低電圧に正確に切り替えて保持状態を維持します。切り替え時間が短すぎると接触器が確実に作動せず、長すぎるとヒューズが焼損する可能性があります。
- 切り替えトリガーメカニズム: 出力電流検出に基づいてトリガーされます。高電流(接触器の作動を示す)が検出された場合、15ms後に12Vに切り替えます。電流が検出されない場合は300Vの出力を継続します。
II. 故障の根本原因分析
直接的原因: 現場調査では、モジュール内のヒューズが繰り返し焼損していることが明らかになりました。核心的な故障点は内部回路の劣化であり、接触器の作動後に出力電圧を300Vから12Vに切り替えるタイミングが遅れ、結果として300Vの高電圧出力が継続し、過大な電流が発生し最終的にヒューズが焼損しモジュールが機能しなくなりました。
根本的原因:
- 熱放出環境が不良: KC2接触器と電源モジュールは密閉された起動盤内に設置されており、通風や熱放出が制限されています。
- メンテナンス設計上の欠陥: 技術的な保護のために、機器メーカーはモジュール全体を封入しており、これにより熱放出がさらに妨げられています。モジュールは動作中に常に電源が供給され、高温環境下では電子部品が急速に劣化し、性能が低下し最終的に正常な切り替え機能を喪失します。
III. 解決策と実装
1. 核心的な変更アプローチ
元のモジュールの「二重機能」設計(高電圧での作動と低電圧での保持)はコストがかかりやすく故障しやすいため、機能分離のソリューションを採用します。
- 既存の部品の再利用: 元のワイド電圧電源モジュールの一時的な300V DC高電圧出力能力を利用して、接触器の作動を駆動します。
- 新規部品の追加: 作動後の接触器の保持に専念するため、独立した低コストの12V DC定電圧電源モジュールを導入します。
- 重要な制御: 接触器が確実に作動した瞬間に制御回路が元のモジュールへの電源を自動的に遮断し、高電圧モードでの長時間動作による焼損を防ぎます。
2. 変更後のシステムの主要な部品と機能
- 元のワイド電圧電源モジュール: 一時的な300V作動電圧のみを提供するように再利用されます。
- 新しい12V DC電源モジュール: 持続的な12V保持電圧を提供し、通気性の良い場所に設置されます。
- 絶縁ダイオード(2個): 300Vと12Vの電源を相互干渉や逆流から隔離します。
- 制御リレー(KA1): 運用プロセスの順次実行を確保する論理制御信号を提供します。
- 反跳防止回路: 異常条件での接触器の「作動-解除」の繰り返しを防ぐための安全冗長設計です。
IV. 変更の結果
この技術的な変更により、経済的および運用上の大きな利益が得られました。
- 大幅なコスト削減: 新しい12V電源モジュール(約100元/個)を追加することで、元のワイド電圧モジュール(約5,000元/個)を置き換え、各装置の維持管理コストを大幅に削減し、高い投資回収率を達成しました。
- 運用環境の最適化: 新しい12Vモジュールはキャビネット外に設置され、熱放出が大きく改善され、オンラインでの状態監視とメンテナンスが容易になりました。
- 機器寿命の延長: 元のモジュールは一時的にしか動作しないため、摩耗が大幅に減少しました。新しいモジュールは理想的な環境で動作し、長寿命を確保します。全体的なソリューションはKC2電源システムのサービスライフを大幅に延ばしました。
- 高い柔軟性: このソリューションは、元のモジュールが故障した後の修理措置としても、故障前の予防的な技術アップグレードとしても実施でき、元のモジュールの状態に関わらず柔軟に対応できます。
- 実証された運用安定性: 実際の運用では、このソリューションの信頼性と有効性が確認されました。最初のバッチで改造された装置は、KC2電源の問題による停止なしで2年以上安定して動作しており、ソリューションの優位性が完全に実証されました。