定義
熱線式計測器とは、電流の加熱効果を利用してその電流の大きさを測定する装置の一種です。その動作原理は、電流がワイヤーを通るとき、生成される熱によりワイヤーが膨張し長さが増加することに基づいています。この多機能な計測器は交流(AC)と直流(DC)の両方を測定でき、様々な電気アプリケーションにおいて貴重なツールとなっています。
熱線式計測器の構造
以下の図に示すように、熱線式計測器の構造は以下の通りです。その動作の核心部分では、測定する必要がある電流がプラチナ・イリジウム製のワイヤーを通されます。このワイヤーは、高融点と優れた電気伝導性により、電流による加熱効果下でも信頼性のある性能を発揮します。熱線式計測器は通常、2本のワイヤー構成を使用しています。

熱線式計測器の構造
1本のワイヤーは2つの端子間にしっかりと固定され、2本目のワイヤーは最初のワイヤーと3つ目の端子間に接続されます。糸はプーリー上を通過してばねに取り付けられており、このばねはプラチナ・イリジウム製のワイヤーに張力を与え、初期状態を維持します。
熱線式計測器の動作原理
電流がプラチナ・イリジウム製のワイヤーを通ると、ジュール加熱効果によりワイヤーが加熱され膨張します。ワイヤーが加熱されると、その垂れ込みが増加しますが、ばねの力によりワイヤーは元の位置に戻ります。ワイヤーの膨張と収縮の繰り返しにより、プーリーが回転し、計測器の表示部の針が偏角します。特に、ワイヤーの膨張の程度は通過する電流の有効値の平方に比例するため、正確な電流測定が可能となります。
熱線式計測器の利点
熱線式計測器にはいくつかの顕著な利点があります:
多目的な測定能力:交流(AC)と直流(DC)の両方を測定できるため、幅広い電気アプリケーションに適しています。
校正の一貫性:転送型計測器として、ACとDCの測定で同じ校正が可能です。これにより、校正プロセスが簡素化され、異なる電流タイプ間での信頼性と一貫性が確保されます。
磁場への耐性:熱線式計測器は迷走磁場に対して免疫です。この特性により、大きな電磁干渉のある環境でも正確な測定が可能です。
シンプルでコスト効率の高い設計:その構造は比較的単純で安価であり、趣味の人から予算制約のあるプロフェッショナルまで、様々なユーザーにとってアクセス可能なオプションです。
熱線式計測器の欠点
その利点にもかかわらず、熱線式計測器にはいくつかの制限があります:
応答時間の遅さ:主な欠点の一つは応答時間が遅いことです。ワイヤーが加熱され膨張し、針が偏角するまでの時間は、変動する電流値の迅速な測定が必要なアプリケーションには適していない可能性があります。
ワイヤーの伸びによる不安定性:時間とともに、反復的な加熱と冷却サイクルによりワイヤーが伸び、計測器の読み取りが不安定になることがあります。この伸びは徐々に測定の精度に影響を与え、頻繁な校正またはワイヤーの交換が必要になります。
消費電力が高い:熱線式計測器は他の種類の計測器と比較して相対的に多くの電力を消費します。この高い消費電力は、特にエネルギー効率が重要なアプリケーションでは問題となる可能性があります。
過負荷と機械的な衝撃に対する脆弱性:過負荷条件や機械的な衝撃に耐える能力がありません。短時間であっても過大な電流や突然の衝撃がデリケートなワイヤーや他の部品を損傷し、計測器を動作不能または不正確にする可能性があります。
これらの前述の欠点により、熱線式計測器は多くの現代的なアプリケーションではより高度な熱電計測器に置き換えられることが多いです。