リークリアクタンスの定義
トランスフォーマーでは、全ての磁束が一次巻線と二次巻線の両方にリンクするわけではありません。一部の磁束は一方の巻線のみにリンクし、これをリーク磁束と呼びます。このリーク磁束により、影響を受ける巻線に自己リアクタンスが生じます。
この自己リアクタンスはまた、リークリアクタンスとも呼ばれます。トランスフォーマーの抵抗と組み合わさるとインピーダンスを形成します。このインピーダンスにより、一次巻線と二次巻線の両方で電圧降下が発生します。
トランスフォーマーの抵抗
電力トランスフォーマーの一・二次巻線は通常銅で作られています。銅は良好な導体ですが超伝導体ではありません。超伝導体は実用的には利用できません。したがって、これらの巻線にはある程度の抵抗があり、これらを総称してトランスフォーマーの抵抗と呼びます。
トランスフォーマーのインピーダンス
前述のように、一・二次巻線には抵抗とリークリアクタンスがあります。これらの抵抗とリアクタンスが組み合わさったものがトランスフォーマーのインピーダンスです。R1とR2、X1とX2がそれぞれトランスフォーマーの一・二次抵抗とリークリアクタンスである場合、Z1とZ2はそれぞれ一次巻線と二次巻線のインピーダンスとなります。
トランスフォーマーのインピーダンスは、トランスフォーマーの並列運転において重要な役割を果たします。
トランスフォーマーのリーク磁束
理想的なトランスフォーマーでは、すべての磁束が一次巻線と二次巻線の両方にリンクします。しかし、実際には全ての磁束が両方の巻線にリンクするわけではありません。大部分の磁束はトランスフォーマーのコアを通過しますが、一部の磁束は一方の巻線のみにリンクします。これをリーク磁束と呼び、コアではなく巻線の絶縁材やトランスフォーマーオイルを通ります。
リーク磁束は、一次巻線と二次巻線の両方でリークリアクタンス(磁気リーク)を引き起こします。
トランスフォーマーのインピーダンスにより巻線で電圧降下が発生します。インピーダンスはトランスフォーマーの抵抗とリークリアクタンスの組み合わせです。一次側に電圧V1を適用すると、一次リークリアクタンスによる一次自己誘導電動力のバランスを取るためにI1X1の成分が必要になります。(ここでX1は一次リークリアクタンス)。さらに、トランスフォーマーの一次抵抗による電圧降下も考慮すると、トランスフォーマーの電圧方程式は以下のようになります。
同様に二次リークリアクタンスの場合、二次側の電圧方程式は以下のようになります。
上記の図では、一次巻線と二次巻線が別々の脚に示されており、このような配置はリーク磁束が大きくなる可能性があります。
一次巻線と二次巻線のリークを排除するためには、巻線を同じ空間に配置することが理想ですが、これは物理的に不可能です。しかし、二次巻線を一次巻線の同心円状に配置することで問題を大幅に解決することができます。