
ピッファータイプSF6遮断器における消弧プロセスの詳細説明
ピッファータイプSF6遮断器では、特に短絡状態での高電流の信頼性のある遮断を確保するための重要な機構である消弧プロセスが行われます。このプロセスは、主接点、消弧接点、およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ノズルとの相互作用を含み、圧縮されたSF6ガスの流れを導いてアークを消去します。以下に、ステップバイステップで消弧プロセスの詳細な説明を示します。
初期状態:主接点が開き、電流が消弧接点に切り替わる
主接点:主接点は通常の負荷電流を運ぶために設計されており、消弧接点の外側に同心円状に配置されています。この初期状態では、主接点はすでに開き、電流は消弧接点に移行(切り替え)しています。
消弧接点:消弧接点は小さく、アーク発生時に生成される高温と高圧に対応できるように設計されています。これらが開き始めると、その間にアークが発生します。
アーク発生:消弧接点が分離し始める
消弧接点が分離し始めると、それらの間の小さな隙間を通って電流が流れ続け、アークが形成されます。この時点では、アークはまだ比較的安定しており、動接点に固定されたPTFEノズルがピッファー容量から圧縮されたSF6ガスをアークに向けて導きます。
ガスの流れは最初は制限されますが、特に高短絡電流ではアークの断面積が大きい可能性があります。この現象は、アークの断面積がノズルの喉部直径よりも大きい場合に発生し、「電流詰まり」と呼ばれます。電流詰まり時には、アークによってガスの流れが部分的にブロックされ、効果的にアークを冷却することができません。
ガス圧力の上昇とアークの収束
機械的な動きと熱伝達:消弧接点がさらに分離すると、接点の機械的な動きによりピッファー容量内のSF6ガスがさらに圧縮されます。また、アークからの熱がガスに伝わり、ガスの温度が急速に上昇します。この機械的な圧縮と熱伝達の組み合わせにより、ピッファー容量内のガス圧力が大幅に上昇します。
電流ゼロクロッシングへの接近:アークが自然なゼロクロッシング(交流がゼロを通過する点)に近づくと、アークの断面積が減少し始めます。アークサイズの減少により、圧縮されたSF6ガスがノズルを通じてより自由に流れることができます。
強力なガス噴射:消弧接点が完全に分離する直前、ピッファー容量内の圧縮ガスがノズルを通じて放出され、アークに対して直接強力な噴射が行われます。この高速のガス流れにより、アークが急速に冷却され、引き伸ばされ、イオン化プラズマが破壊され、アークが消滅します。
アーク消滅と絶縁強度の回復
アーク消滅:アークがゼロクロッシングで消滅すると、電流の流れが停止し、アークは存在しなくなります。アークの不在により熱源が除去され、SF6ガスが冷却されます。
ガス粒子の再結合:アークが消滅した後、分解されたSF6ガス粒子(SF4、S2F10など)が再結合し、元のSF6の化学構造を回復します。この再結合プロセスにより、ガスの絶縁特性も回復します。
絶縁強度の回復:ガス粒子の迅速な再結合とガスの冷却により、接点間の絶縁強度が急速に回復します。これにより、電流がゼロを通過した後に接点間の電圧が上昇してもアークが再燃することはありません。
接点の動きが停止:アークが消滅し、絶縁強度が回復すると、接点の動きが停止します。遮断器(CB)内のガス圧力は安定し、システムは正常な非導電状態に戻ります。
注目すべきポイント:
電流詰まり:高短絡電流では、アークの断面積がノズルの喉部直径よりも大きくなることがあります。これは一時的にガスの流れをブロックし、「電流詰まり」と呼ばれます。しかし、アークからの熱伝達と機械的な圧縮により、ガス圧力は引き続き上昇します。
ピッファー容量とノズルの設計:ピッファー容量は圧縮されたSF6ガスを貯蔵する重要なコンポーネントであり、PTFEノズルを通じて放出されます。ノズルはガスの流れを正確にアークに向け、効果的な冷却と消弧を確保するように設計されています。
迅速な絶縁強度の回復:SF6ガスの主要な利点の一つは、アークが消滅した後でも迅速に絶縁特性を回復できることです。これにより、遮断器は高電流を安全に遮断し、アークの再燃を防ぐことができます。
結論
ピッファータイプSF6遮断器の消弧プロセスは、特に短絡状態での高電流の遮断において非常に効率的かつ信頼性が高い方法です。機械的な圧縮、ガスの流れ、およびSF6ガスの一意の特性の組み合わせにより、アークが急速に消滅し、接点間の絶縁強度が迅速に回復します。この設計により、遮断器は大故障電流を処理しながら、電気システムの整合性と安全性を維持することができます。