絶縁油の誘電損失試験装置は、絶縁油の誘電損失係数(tan δ)と容量を測定するための装置です。その動作原理は、交流電界下での絶縁油の損失特性を測定することに基づいています。以下にその原理について詳しく説明します。
電界の適用:
試験装置は、試験容器内の絶縁油サンプルに交流電界を適用します。通常、この電界は一対の平行平板コンデンサーによって生成されます。
電流の測定:
コンデンサーの電流は、位移電流(リアクティブ電流)と損失電流(アクティブ電流)の2つの成分に分けることができます。位移電流は容量に関連し、損失電流は誘電損失係数に関連しています。
位移電流 Ic と損失電流 Id は、総電流 I と位相差 ϕ を測定することで区別することができます。
位相差の測定:
適用された電圧 V と総電流 I の間の位相差 ϕ を測定することで、誘電損失角 δ を決定することができます。
誘電損失係数 tanδ は、損失電流と位移電流の比として定義されます。

容量の測定:
コンデンサーの容量 C は、絶縁油の品質評価のためにさらに確認することができます。容量は、周波数 f と適用された電圧 V および電流 I を測定することで計算できます。

データ処理:
試験装置の内蔵データ処理ユニットは、上記の式を使用して誘電損失係数 tanδ と容量 C を計算し、結果を表示します。
絶縁性能の評価:
絶縁油は、変圧器、遮断機、ケーブルなどの多くの電気機器において重要な絶縁材料です。誘電損失係数 tanδ は、絶縁油の劣化度合いと汚染レベルを反映します。高い tanδ 値は、絶縁油が劣化しており、交換または処理が必要であることを示します。
故障診断:
定期的な誘電損失係数の測定は、部分放電、水分侵入、汚染などの潜在的な故障を検出するのに役立ちます。これにより、設備の故障を防ぎ、メンテナンスコストを削減し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
品質管理:
生産プロセス中には、誘電損失試験装置を使用して新しく製造された絶縁油の品質を監視し、標準要件を満たしていることを確認することができます。これにより、製品の信頼性と安全性が向上します。
メンテナンス管理:
既に使用されている電気設備の場合、絶縁油の誘電損失係数の定期的な測定は、メンテナンス管理の重要な一部です。これにより、適切なメンテナンス計画を立て、設備の寿命を延ばすことができます。
絶縁油の誘電損失試験装置は、誘電損失係数と容量を測定することで、絶縁油の絶縁性能を効果的に評価します。電気設備の潜在的な故障を診断し、電気システムの安全かつ信頼性のある動作を確保し、品質管理とメンテナンス管理を支援します。