I. タップチェンジャーの基本原則と機能
トランスのタップは、トランスの出力電圧を調整するために使用されます。電力網の電圧は、運転モードや負荷の大きさによって変動します。電圧が高すぎたり低すぎたりすると、トランスの正常な動作や電気設備の出力と寿命に影響を与えます。電圧品質を向上させ、トランスが定格出力電圧を持つようにするためには、通常、一次巻線のタップ位置を変更して電圧を調整し、このタップの位置を接続および切り替える装置をタップチェンジャーと呼びます。
2. 電力トランスにタップを設置する理由
長距離送電における電圧変動への対応
送電線路は長く、電圧降下が比較的大きくなります。例えば、長距離高圧送電では、線路抵抗などの要因により電圧が大幅に低下します。送電トランスのタップ設定は、送電線路の電圧状況に応じて調整することで、次のレベルの電力網または変電所への電圧出力を安定させることが可能です。
異なる電圧レベルの電力網の接続要件への対応
送電トランスは、しばしば220kVや500kVなど、異なる電圧レベルの電力網を接続します。異なる電圧レベルの電力網では、電圧変動範囲と要件が異なります。タップチェンジャーは、異なる電圧レベルの電力網間の電圧マッチング要件に柔軟に対応し、異なる電圧レベルの電力網間での効率的かつ安定した電力送電を確保することができます。
大容量送電の要件への対応
送電トランスの容量は比較的大きく、送電する電力は電力システム全体の安定運転に大きな影響を与えます。タップを設定することで、大容量送電時の電力システムの運転条件(ピーク時やオフピーク時など)に応じて電圧を調整し、電力品質を確保し、不安定な電圧による電力システムへの悪影響を減らすことができます。
III. 配電トランスにタップチェンジャーを設置しない理由
電圧変動の範囲が比較的小さい
配電トランスは主にユーザーへ電力を分配するために使用されます。その供給範囲は比較的小さく、例えば10kVから約400Vにステップダウンして個々の消費単位へ供給します。この短い供給距離内では、送電線路と比べて電圧変動の範囲が比較的小さく、送電トランスほどの電圧調整の必要性はありません。
ユーザー側の電圧要求が比較的固定されている
多くのユーザー機器は固定された電圧標準(例えば220Vまたは380V)で設計されています。配電トランスは、地域の電力供給条件に基づいて適切な巻線比で設計され、一度決定されると頻繁な調整は必要ありませんので、タップを設定する必要はありません。
コストと複雑さの考慮
タップを設定すると、配電トランスのコストが増加します。これはタップチェンジャーの購入、設置、メンテナンスコストを含みます。また、トランスの構造複雑性も増加し、信頼性が低下します。広く分布し、比較的単純な機能(主に電圧降下と電力分配)を持つ配電トランスにおいては、タップを設定せずにコストを削減し、運用信頼性を向上させながらユーザーの基本的なニーズを満たすことができます。